8月31日の判決 更新料の合意がない以上払う必要なし。

 

東京地方裁判所平成19年8月31日判決

過去に更新料を支払ったとしても,更新料を支払う合意が無い以上支払う必要はない。

事案の概要

本件は、土地の賃貸人である原告が、賃借人である被告に対し、賃貸借契約の更新に当たり、更新料を支払う旨の合意があったと主張して、更新料の支払を求める事案である。

裁判所の判断

昭和50年契約に係る契約書には、借地契約の更新に当たり更新料を支払う旨の条項は存在せず、それ以前の契約書にその旨の条項が存在したことを認めるに足りる証拠もないから、更新料の支払義務が、本件借地契約の内容になっていたと認めることはできない。

そこで、今回の契約更新に当たり、更新料を支払う旨の個別的合意が成立したかどうかが問題となるが、このような合意の成立を認めるに足りる事情を見出すことはできない。

原告の主張自体、更新料の計算書に対して、被告が更新料は支払えない旨の意思表示をしなかったとか、賃料減額の要否を対象とする別件調停の席で、被告が更新料は支払わない旨を積極的に述べなかったといった、いわば消極的な態度を問題にしているのにすぎず、これらの事情をもってしては、更新料の支払に関する合意が成立したと認定するのには不十分であるといわざるを得ない。

また、昭和50年契約締結の際に更新料の支払が行われていることについては当事者間に争いがないものの、同時に作成された契約書に更新料支払に関する条項が存在しないことは上記のとおりであるし、昭和50年契約締結後、8階建の本件建物が建築されていることを考慮すれば、堅固建物建築を承認する対価という意味合いも含めて更新料が支払われたとする被告の主張も首肯し得るものである。

したがって、昭和50年契約締結の際には更新料が支払われたという事実から直ちに、今回の更新に当たっても更新料が支払われるべきであると結論することはできない。

以上のとおり、本件においては、更新料支払に関する合意の存在を認めるに足りる証拠はなく、他に、被告の更新料支払義務を肯定すべき根拠を見出すことはできない。したがって、原告の更新料請求は、その額についての主張を判断するまでもなく失当であり、棄却を免れない。