8月28日の判決 ブログにセクハラ記事でも無罪放免。

宮崎地方裁判所日南支部8月28日判決

 

考察

セクハラ記事を書かれて腹を立てるくらいなら初めからキモいことをするな❗️

 

事案の概要

ブログにセクハラ行為を行ったと書いたことが名誉毀損にあたるとして慰藉料請求した事案

 

当裁判所の判断

本件記事は,「係長」から,歓迎会の際に俺はお前を抱きたいんだよなどと言われたこと,コーヒーの匂いを嗅ぐことを要求されたこと,ブラウスの下にインナーが透けていると指摘されたこと,子どもの写真のDVDを30分ほど見せられたこと,名誉毀損にもなりうるんだとか逆恨みしやがってなどと言われたことが記載されたものであり,これらの部分は原告に関わる事実を摘示していると考えられる。

被告は,これを少なくとも7名の友人がURLを知るウェブサイト上に掲載した上,本件記事を印刷したものを母を通じてCに渡したり数名のB市職員に見せており,これを見たB市職員にとっては「係長」が原告を指すことは容易に判明することであり,7名の友人についても被告の勤務先や配属先を知る立場か容易に知り得る立場にあり,「係長」とは原告のことであると判明し得る。

彼らを通じてより多くの者に本件記事の内容が伝わる可能性があり,現にLは,Cから本件記事のコピーを渡されたのであり,Dは誰から見せてもらったか覚えていないがこれを見たことがあると証言しているのである。

被告が本件記事をウェブサイト上に掲載し,これを印刷したものをCに渡し数名のB市職員に見せたことは,公然と事実を摘示して原告の名誉を毀損するものといえる。

ところで,民事上の不法行為たる名誉毀損については,その行為が公共の利害に関する事実に係り,専ら公益を図る目的に出た場合には,摘示された事実が真実であることが証明されたときは,その行為には違法性がなく,不法行為は成立しないものと解するのが相当である(最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決)。

本件記事は,これらの事実はB市という被告の勤務先において上司からセクハラを受けたとか不快な言動を受けたことを内容とするもので,公共の利害に関する事実といえ,被告としては事実を明らかにして勤務先の職場環境を改善することや本件調査に協力することを目的として本件記事を作成したものと認められ,専ら公益を図る目的に出たものというべきである。

被告が本件記事をウェブサイトに掲載したのは友人等の閲覧者に悩みを打ち明けるという側面もあろうが,主たる目的は上記のとおりであろうし,被告が閲覧者に悩みを打ち明けて被告自身の精神的な安定を得たり適切な助言を得るなどすれば勤務環境の改善を図るということに資することになるといえ,公益目的性を否定するものではない。

被告は本件記事の作成前にF課長らに事情を説明したが,概略的な説明しかしておらず,本件記事においてより詳細な事実関係や被告自身の心情等を文書にまとめているのであるから,その作成は本件調査に協力することをも目的としていたといえる。

本件記事のうち原告に関する事実を摘示した部分が真実であることは上記で認定したとおりである。

したがって,被告が本件記事をウェブサイトに掲載しこれを印刷したものを数名のB市職員に見せるなどしたことには違法性がなく,不法行為は成立しないというべきである。