8月24日の判決 飲酒運転で事故。仕事も退職金もパー

8月24日の判決 酒気帯び運転を理由に懲戒免職処分となった市立中学校の教頭が退職手当も貰えなかったことから,退職手当不支給処分の違法性を争った事例

 

大阪高等裁判所平成24年8月24判決

 

事案の概要

被控訴人は,飲酒の上,自動車運転を開始したにとどまらず,運転開始後も継続的に飲酒することを目的として,自宅で飲んでいたウィスキーの瓶を車内に持ち込み,実際に,駐車中あるいは運転中に飲酒して物損事故を起こした。

本件事故後のアルコール検知によると呼気1リットル中0.7ミリグラムのアルコールが検出されたが,飲酒量は,アルコール度数40パーセントのウィスキーをストレートで合計431ミリリットル飲酒しているが,自動車運転開始後の飲酒量は約200ミリリットルに及ぶ。

 

裁判所の判断

被控訴人が普段から飲酒により酩酊することがあったため,本件非違行為前,上司から飲酒方法について注意を受けていたことや,本件事故は幸い物損に止まったものの,上記飲酒量等やアルコール検出量からして,人身事故発生の危険性も大いにあったことを考慮すると,本件非違行為の内容及び程度は極めて悪質かつ危険なものであり,これに対する非難の程度は大きい。

加えて,被控訴人は,生徒を指導する教職員であり,かつ,本件非違行為当時,その教職員を指導・監督する教頭職という管理職の立場にあったから,本件非違行為に対する責任は極めて重大であり,本件非違行為により,公教育全体への信頼を損ねるとともに,勤務先であった京都市立中学校の指導体制にも悪影響を与えたものである。

そして,前提事実のとおり,市教委は,本件条例13条1項の上記諸事情を勘案した上,本件非違行為について,特に参酌すべき情状もなく,軽減する余地がないとして,被控訴人に対して,退職手当の全部支給制限処分である本件処分をしたものである。

裁判所が退職手当支給制限処分の適否を審査するに当たっては,退職手当管理機関の裁量権の行使に基づく処分が社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権を濫用したと認められる場合に限り違法であると判断すべきものであるから,これを前提に本件処分が違法であるか否かについて検討するに,本件非違行為当時,被控訴人が教職員でありかつ管理職の地位にあったこと,本件非違行為の経緯について斟酌すべき事情がない上,本件非違行為である酒気帯び運転の内容及び程度は極めて悪質かつ危険なものであり,これに対する非難の程度は大きいこと,本件非違行為による公教育全体に対する信頼の失墜や勤務先中学校への支障等の事情を勘案すると,学校教育に多大な貢献をするなど本件非違行為前における被控訴人の勤務状況が良好であり,また,本件非違行為後における被控訴人の対応が相当であったこと等の事情を斟酌したとしても,退職手当の全部支給制限をした本件処分が,社会観念上著しく妥当を欠き,裁量権を濫用したものとは認められない。

 

考察

自動車事故の厳罰化のきっかけとなったのが,自動車を運転しながらの飲酒運転で幼い子どもが亡くなった東名高速での交通事故であることからすると,教育者である者が自動車を運転しながら飲酒運転をしていたということは到底許されないというのが背後にあるのではないでしょうか。

 

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