桐生貴央の法律解説ブログ - 広尾総合法律事務所

未婚の両親の間に生まれた非嫡出子の相続分

平成23年12月21日,名古屋高等裁判所において,非嫡出子の相続人について規定した民法1044条の違憲性について争われた事件について判決があった。

民法1044条は非嫡出子の相続分については嫡出子の半分とする規定であるが,この相続分は不公平なので憲法14条に反するとしてかねてより争われている。

1995年,最高裁判所は,合理的な理由があるとして,この差別については合憲であるとの判断を下したが,最近でも,この問題は,最高裁大法廷に回付されたことがあり,判例変更になるかどうか裁判所の判断に注目が集まっている。

このような状況下で今回の高裁判決は出されたのであるが,名古屋高裁は民法1044条自体は憲法14条に反するものではないと判断し,ただ民法1044条の立法理由は法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図るために,法定相続分については嫡出子を非嫡出子よりも優遇するが,非嫡出子にも嫡出子の半分の法定相続分を認めて保護を図るとするところにあるとすると,尊重し優遇されるべき法律婚が現に又は過去に存在している状態で出生した非嫡出子との関係において差別をすることは一定の合理的な理由があるが,非嫡出子が出生したときにおいて,被相続人がそれまで一度も婚姻したことがない場合には,その時点では尊重すべき何らの法律婚はないので,当該非嫡出子との関係で本件規定により尊重すべき嫡出子もいないから,このような場合において,後日被相続人が婚姻して出生した嫡出子との関係で民法1044条を適用することはその差別に合理性は認められないから違憲であるとした。

この判決は,最高裁が合憲と判断しているので,民法1044条自体は憲法14条には違反しないが,被相続人が一度も結婚していない状況下で生まれた非嫡出子の場合にまで適用すべきではないとして適用違憲の判断を下したものなので,民法1044条の存亡についての問題はまだまだ続くことになります。

www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120127141130.pdf


広尾総合法律事務所 | 2012.02.02 | PermaLink

事実婚と非嫡出子

著名な女優さんの内縁の夫が死亡したことがワイドショーの話題となっております。

報道によると,内縁の夫には先妻との間の3人の子供,女優さんとの間の子供の他にも,認知した子供がいるとのことですが,この場合の相続について,遺言書がなかったら,各子供の相続分は異なってきます。

先妻との間の子供は,法律上婚姻関係にある夫婦から生まれた子供なので,嫡出子として当然に相続権があります。

これに対し,法律上婚姻関係にない夫婦から生まれた子供の場合,たとえ父親との間に血縁関係があったとしても法律的な意味での親子関係はありません。
この場合,父親が認知することによって初めて法律的な親子関係となり,相続権も発生することになります。
したがって,女優さんのお子さんも内縁の夫が認知しない限り,法律上の親子関係がないということになり,相続権も発生しないことになります。

では,内縁の夫が認知した場合,各子供の間の相続分はどうなるでしょうか?
この点で,嫡出子か非嫡出子かが問題となります。

前述したように,嫡出子とは法律上婚姻関係にある夫婦から生まれた子供のことをいい,これに対し,非嫡出子とは法律上婚姻関係にない夫婦から生まれた子供で,父親から認知された子供のことをいいます。

そして,嫡出子と非嫡出子の相続分については,非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の1/2と規定されております(民法900条4号ただし書)。

この規定については,これまでも憲法14条1項(法の下の平等)等に違反するとして裁判で争われてきましたが,合理的理由のない差別とはいえないとして合憲の判断が出されています(平成7年7月5日最高裁大法廷決定)。

また,最近でも,この問題は,最高裁大法廷に回付され,判例変更になるかどうか裁判所の判断に注目が集まっていたのですが,平成23年3月9日,当事者間で和解がまとまったとして,訴えが却下されております。

いずれにしろ,この問題は,家族制度の問題やら,法の下の平等やら,様々問題が絡み合っていて一概にどうとは言えませんので,裁判で問題となっていた事例を提示しますから,皆様それぞれ考えてみてはいかがでしょうか?www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110314134519.pdf


【事案の概要】

1 B:昭和の時代に死亡
    A:平成14年に死亡
    C:平成19年に死亡
   遺産分割の対象は,AとCの財産

2 XからYに対して,遺産分割の審判申立

3 Yの主張
  民法900条4号ただし書の規定は憲法14条1項等に違反する。

【考察】

よくある話は,同じ親から生まれた子供同士なのに,なぜ相続分で差が出るのか,差が出るのは不公平だという話です。

しかし,民法900条4号ただし書は,兄弟姉妹についての相続分についても規定しております。

C・X・Yが一緒に暮らしていたならば,XとYの相続分が異なるのは不公平という主張は分かりますが,C・XとYが全く別々の生活をしており,お互い顔も知らない状態の中で,Cの財産がYに行くということは,Cからすれば合点がいかないので相続分に差異を設けることもあながち不合理とは言えないとも思えますし,あなたならどちらにしますか?


【参照条文】

第900条  同順位の相続人が数人あるときは,その相続分は,次の各号の定めるところによる。
一  子及び配偶者が相続人であるときは,子の相続分及び配偶者の相続分は,各二分の
  一とする。
二  配偶者及び直系尊属が相続人であるときは,配偶者の相続分は,三分の二とし,
  直系尊属の相続分は,三分の一とする。
三  配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは,配偶者の相続分は,四分の三とし,
  兄弟姉妹の相続分は,四分の一とする。
四  子,直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは,各自の相続分は,相等しいものとす
  る。
      ただし,嫡出でない子の相続分は,嫡出である子の相続分の二分の一とし,父母の
  一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は,父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続
  分の二分の一とする。
 


広尾総合法律事務所 | 2011.08.16 | PermaLink

相続で揉めないために!

平成21年度に家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割調停事件のうち,遺産の価額が相続税の基礎控除額である5,000万円以下のケースが全体の約73% 。

平成21年度の70歳以上世帯の家計資産のうち,不動産の占める割合が約60% 。

72歳の御主人に,66歳の奥様,43歳の息子に,40歳の娘さんがいるご家族で,御主人に万一のことがあった場合,遺言書がないと法定相続分(奥様1/2,息子1/4,娘1/4)に従って遺産を分けることになります。

しかし,相続財産の60%を占める不動産には奥様が住んでいるので処分しずらいし,奥様が不動産を取得するとなると,法定相続分以上の財産を取得することになるので揉めるタネになる。

これに,寄与分やら特別受益が絡んでくると,相続人それぞれの思惑があるのでスムーズに財産分けをすることができなくなります。

そのための解決方法として,御主人が生前に遺言書を作成しておけば,相続分にとらわれずに財産分けをすることができます。

また,どの財産を誰に分けるか決めていないので,今のところ遺言を書くつもりはないとお考えであるのであれば,御自身を被保険者として受取人を相続人の誰かにした生命保険に加入しておくことには抵抗がないでしょうから,保険を使った財産分けをする方法も考えられます。

何れにしろ、人それぞれなので,個別事情によるところが大なので,相続が争族とならないように,お近くの専門家にご相談された方がよいでしょう。


広尾総合法律事務所 | 2011.07.18 | PermaLink

期間延長の特例

以前書いた相続放棄の申述期間に関して,震災から3ヶ月目の6月11日が目前に迫っていることから,議員立法によって特例措置を講じるらしい(本日付けの日経新聞)。
 
これにより,震災で死亡した親の借金を相続するという想定外の不利益を幾ばくか回避することができるだろう。
 
また,借金返済が滞った場合の差し押さえ対象財産から義捐金や東電が支払う賠償金も除外する方針ということで,生活再建にプラスの兆しがようやく見えてきた感じがします。
 
 

広尾総合法律事務所 | 2011.06.07 | PermaLink

相続放棄の期間が迫ってます。

震災から3か月が経とうとしています。

未だ行方不明者も多く,復興への兆しも不透明な状態であるにも拘わらず,国会は相変わらず機能不全に陥っております。

昨日の不信任案決議など,このお陰で一日無駄にしてしまったのですから,仕事放棄の最たるものでしょう。

とりわけ,亡くなられた方の相続に関して,マイナス財産(負債)がプラス財産(財産)を上回ると,相続放棄手続をしなければならないケースが出てきますが,相続放棄手続は,被相続人の死亡を知ってから3カ月以内と定められていますので,多くの方の場合,611日が期限となります。

現状では津波により書類一切が流され,避難所生活を余儀なくされ,財産状況が分からない中での相続放棄手続きに躊躇されている方も多いでしょう。



このような状況においては,本来,政治が機能して期間延長の法案を通すなど,相続放棄に関する措置が望まれるのですが,先に述べたように,この国の政治は期待できませんので,相続手続の延長を申請するなど,相続人がご自身で手続を進めていくしかないということになります。

ということで,期限がすぐそこに迫っておりますから,家庭裁判所なり,お近くの弁護士会にご相談に行くことをお勧めいたします。


広尾総合法律事務所 | 2011.06.03 | PermaLink

遺言で相続人を指定しても,相続人が先に亡くなれば無効。

遺言で相続人を指定しても,相続人が先に亡くなれば無効。


平成23年2月22日,遺言に関する判決が最高裁でありました。

母親が全財産を長男に与える内容の遺言を書いたのですが,母親が亡くなる前に長男が先に亡くなってしまった。

この場合,長男の子供が長男に代わって全財産をもらえるか,

ということが争われた事例です。



このケースでは,既に父親は死亡しており,母親が全財産を長男に相続させる内容の遺言を書いていたのですが,母親よりも長男が先に死亡してしまったので,長男の子らが長男を代襲して母親の全財産を遺言で相続できるかということが争われました。

長男の子らがすべて相続するとなると,長女は遺留分として,全財産の1/4しか権利が認められなくなりますが,今回の判例で,長男に全財産を相続させる内容の遺言が無効となりましたので,長女には1/2の権利があるということになります。
 
 


広尾総合法律事務所 | 2011.02.24 | PermaLink

家族に伝えておきたい情報

人の死は,御家族や関係者にとっては悲しい出来事ですが,悲しみに浸ってばかりはいられないません。

通夜,葬儀・告別式を済ませると,故人に関するさまざまな手続きや届出が待っています。

そして,相続のために戸籍騰本を取り寄せたり,財産目録を作成して税務申告したりする必要があります。

相続手続は七七日(四九日)を終えて一段落付いてから進める方もおられると思いますが,御家族にとっては,どこにどのような財産があるのか,わからない場合もあると思います。

相続は,故人のすべての財産を相続人が引き継ぐことになりますので,不明な財産があると,大変困ります。とりわけ,故人が誰かから借金をしていたり,人の保証人になっていたりする場合,これらの事情を知らないまま相続をした人にとって見れば,思わぬ災難が降りかかることになります。

こうしたことを考えると,生前に相続に必要な情報を御家族に伝えておくことが大切となります。

そこで,万一に備えて,御家族が混乱したり,不測の損害を蒙らないよう,伝えるべき情報をノートなどにまとめておいてはいかがでしょうか。

以下,「家族に伝えておきたい情報」を作成しておきました。

ご自身の心情や御家族に向けてのメッセージを添えてみたり,さらには,後日の相続争いを回避するために遺言書を作成しておくのもよいでしょう。 残された方達へのメッセージとしてお使いいただけたら幸いです。

なお,これらの情報は,残された御家族が困らないために作成するものですから,存在については御家族に話しておきましょう。

家族に伝えておきたい情報
 


広尾総合法律事務所 | 2010.09.15 | PermaLink
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