桐生貴央の法律解説ブログ - 広尾総合法律事務所

決めるは捨てる。

 

毎朝日経新聞の「交遊抄」を見ているのだが,今日は交遊抄ではなく,「喪友記」でした。


普段あまりタイトルを気にした事はなかったが,いつものように読んでいくと,内容は,写真家の石元泰博氏に関する建築家内藤廣氏のコラムだった。


こ のコラムの中で,内藤氏は石元氏の仕事ぶりについて触れているのだが,もっとも印象深かったのは,石元氏はたった一枚の写真のために何十枚もプリントを作 り,その中から一枚の写真を選び抜くというものだった。しかも,石元氏は選び抜いた写真を内藤氏に渡す際に,「自由にトリミングしてもいいよ。」と言った にもかかわらず,内藤氏は1ミリたりとも切れなかったという事でした。


私は,ここに仕事師の神髄を感じたわけですが,普段何気ない言葉として,「仕事」という言葉を皆さん使われていると思いますが,その「仕事」という言葉の定義について,どういうイメージを抱いていますか?


丁度,昨日,私は女性が多く参加した経営者セミナーで,この「仕事」という意味について,お話ししたばかりだったので,今朝,参加者から昨日私が話した内容が日経新聞の朝刊に出ていたので驚いたという電話を頂きました。


昨日,私がお話しした内容はどういうものだったかというと,私は,この「仕事」という意味について参加者に質問したのですが,参加者の反応は,「飯を食うために必要なもの。」だとか,「自己実現するために必要なもの。」だとか,区々でした。


このように皆さんバラバラな答えだったので,「仕事」という概念の本質を知って頂くために,私はあえて「仕事」と対になる概念として「作業」という言葉があることを説明しました。


この「作業」とは,例えば,「右にあるものを左に動かすとか。」,「このデータをエクセルに打ちこんどいて。」とか,いわゆる決められた動作をする事が「作業」ですと説明すると,皆さん素直に理解してくれました。


そして,決められた動作をする「作業」の対概念が「仕事」なのだから,「仕事」とは「決める」ことですよと説明すると,的を射たような感じで皆さん納得して頂けました。

しかし,それでは「決める」とは何ですか?とさらに質問すると,皆さん,再び???でした。


こ の「決める」という概念について,例えば,色々なものの中から一つを選び出す,という答えを出された方もおられましたが,その答えも,私からすると,少し ピンボケな感じがしたので,私は,例えば,好きな人が二人いて,でも結婚は一人の人としか出来ないときに,貴女は一人の人を選んだ以上,他の人を愛する事 が出来ますか?と質問しました。女性の方が多かったので,皆さん,一人の殿方を選んだ以上,他の人と浮気する事は出来ない,との答えでした。


そこで,私は,一人の殿方と結婚するっていう事は,他の男性と別れる,すなわち,「他の男は捨てる。」と言う事ですよね。と尋ねると,皆さん,「そうです。」と納得していただけたのでした。そして,一切を捨て去ることが幸せな家庭を築く第一歩だと言う事でした。

ちょっと,脱線した感もありますが,ここで言いたいのは,「決める」ということは「捨てる」ということだという事です。


写真家の石元氏が何十枚もある写真の中から一枚の写真を選び抜き,他の写真を意図もアッサリと捨て去る。そして,捨て去ったものに対する未練を一切抱かない。抱かないという事によって,選び抜かれた作品が輝いてくる。

 

そこに仕事というものの本質があるのだという事を改めて納得し,今朝,昨日の参加者から頂いた電話で,昨日話した内容を理解いただいたと新ためて実感した「喪友記」でした。


広尾総合法律事務所 | 2012.02.10 | PermaLink
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