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過払金返還請求権の消滅時効の起算点

事案の概要

貸金業者に対し,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引に係る弁済金のうち利息制限法所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると,過払金が発生していると主張して,過払金の返還を求めたところ、貸金業者が,過払金返還請求権の一部は,過払金の発生時から10年が経過し,消滅時効が完成していると主張して,これを援用した事案。

結論

継続的な金銭消費貸借取引に関する基本契約が,利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により発生した過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含む場合には,上記取引により生じた過払金返還請求権の消滅時効は,特段の事情がない限り,上記取引が終了した時から進行する。

理由

借入金の残元金が一定限度で繰り返し行われ,借入金債務の残額の合計を基準として各回の最低返済額を設定して毎月返済が行われる継続的金銭消費貸借取引契約は,基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には,弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)を含む場合,新たな借入金債務の発生が見込まれる限り,過払金を同債務に充当することとし,借主が過払金に係る過払金返還請求権を行使することは通常想定されていないものというべきであるから,一般に,過払金充当合意には,借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点,すなわち,基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし,それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず,これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当である。

そうすると,過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては,同取引継続中は過払金充当合意が法律上の障害となるというべきであり,過払金返還請求権の行使を妨げるものと解するのが相当である。

借主は,基本契約に基づく借入れを継続する義務を負うものではないので,一方的に基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引を終了させ,その時点において存在する過払金の返還を請求することができるが,それをもって過払金発生時からその返還請求権の消滅時効が進行すると解することは,借主に対し,過払金が発生すればその返還請求権の消滅時効期間経過前に貸主との間の継続的な金銭消費貸借取引を終了させることを求めるに等しく,過払金充当合意を含む基本契約の趣旨に反することとなるから,そのように解することはできない(最高裁平成17年(受)第844号同19年4月24日第三小法廷判決・民集61巻3号1073頁,最高裁平成17年(受)第1519号同19年6月7日第一小法廷判決・裁判集民事224号479頁参照)。

平成21年1月22日最高裁判所第一小法廷判決
 


広尾総合法律事務所 | 2009.01.23 | PermaLink
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